caravan活動記録と雑記。
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Posted by mio - 2011.01.04,Tue
いつぞや書いたオルハンの話
故郷にて 若いオルハン 甘酸っぱい感じ。
故郷にて 若いオルハン 甘酸っぱい感じ。
「あら、可愛い瓶ね」
鈴のような声が、見事な金細工をあしらった瓶と、青年のこころを揺らすように響いた。
「今日もお店番?オルハン」
「まあな」
まだどこかあどけなさを残す青年は、すこし不服そうな顔をした。年は17。目尻に細くひかれた朱は、彼がこの店の跡継ぎだというあらわれだ。
いま、かれは長旅に出ている父に代わって店をまかされた。とはいっても実務をになっているのは経験豊富な店員達で、
オルハンに必要なことといえば店主として必要な目を育てること、そして愛想よくお客に対応することだった。後者は彼にとって、なかなかむずかしいものだったが。
上客、というより古くからの「友人」である少し年上の女性は、オルハンの不服そうな顔の意味を見抜き笑った。
「お店番っていいかたはよくなかったかしら」
「別に間違ってねえよ」
オルハンは、女性から軽く目線を反らしたまま、手に持っていた香炉を台に戻した。
「それで、エスラム、今日は?親父さんのお使いか?それとも部屋でつかう香か?」
「ええとね」
彼女は、一瞬言葉につまった。
「なんだよ」
「結婚式ににあいそうな、素敵なお香一式、選んでほしいの」
オルハンは、思いもかけない言葉に、返事を失った。
「しってるでしょう?結婚するとなると、いろいろ必要じゃない、薔薇水も扱ってたかしら?」
エスラムはたんたんと、結婚式に必要な一連の道具をオルハンにつげた。結婚式は、神殿での行事についで、香が使われる。どのような香を渡せばいいかなど、よくわかっていた。
「あとで、お宅におくればいいか?」
「ええ、再来月だから、まだ時間はあるわ」
再来月。もうながいこと前から決まっていた話だったのだろう。だがそれがどうした?オルハンは、笑おうと努力した。
「で、いいひとかい?」
「会ったことは、ないけれど、そう聞いているわ。東の街の方。大地主なのよ」
彼女の家は、街でも有数の名家だ。娘であるエスラムが、顔も知らない男に嫁ぐとなっても、不思議ではない。
「そう、か」
小さな頃から、父に連れられて店にきていた彼女。オルハンに対して姉のようにふるまっていた彼女。
そうだな、このままじゃこのおてんばも、適齢期をすぎちまう。年貢の納め時なんだろうな。
「それじゃあ、待ってるから」
沈黙に耐えきれなかったのか、エスラムが踵をかえす。
オルハンはとっさに、彼女がさっき見ていたこびんを差し出した。
「これもってけよ」
「え?私、お財布持ってきてないわ」
「お代はいい」
「え?」
「お得意様への、餞別だよ」
とっとけ、となおも瓶を差し出すオルハンを見て、エスラムは困った笑顔を浮かべ、手をだした。細い指が、瓶に触れる。
一瞬手が触れ合った。だが、とうとう握ることはかなわなかった。
「お幸せに、エスラム」
青年の気持ちを知ってか知らずか、彼女はありがとう、と笑った。
鈴のような声が、見事な金細工をあしらった瓶と、青年のこころを揺らすように響いた。
「今日もお店番?オルハン」
「まあな」
まだどこかあどけなさを残す青年は、すこし不服そうな顔をした。年は17。目尻に細くひかれた朱は、彼がこの店の跡継ぎだというあらわれだ。
いま、かれは長旅に出ている父に代わって店をまかされた。とはいっても実務をになっているのは経験豊富な店員達で、
オルハンに必要なことといえば店主として必要な目を育てること、そして愛想よくお客に対応することだった。後者は彼にとって、なかなかむずかしいものだったが。
上客、というより古くからの「友人」である少し年上の女性は、オルハンの不服そうな顔の意味を見抜き笑った。
「お店番っていいかたはよくなかったかしら」
「別に間違ってねえよ」
オルハンは、女性から軽く目線を反らしたまま、手に持っていた香炉を台に戻した。
「それで、エスラム、今日は?親父さんのお使いか?それとも部屋でつかう香か?」
「ええとね」
彼女は、一瞬言葉につまった。
「なんだよ」
「結婚式ににあいそうな、素敵なお香一式、選んでほしいの」
オルハンは、思いもかけない言葉に、返事を失った。
「しってるでしょう?結婚するとなると、いろいろ必要じゃない、薔薇水も扱ってたかしら?」
エスラムはたんたんと、結婚式に必要な一連の道具をオルハンにつげた。結婚式は、神殿での行事についで、香が使われる。どのような香を渡せばいいかなど、よくわかっていた。
「あとで、お宅におくればいいか?」
「ええ、再来月だから、まだ時間はあるわ」
再来月。もうながいこと前から決まっていた話だったのだろう。だがそれがどうした?オルハンは、笑おうと努力した。
「で、いいひとかい?」
「会ったことは、ないけれど、そう聞いているわ。東の街の方。大地主なのよ」
彼女の家は、街でも有数の名家だ。娘であるエスラムが、顔も知らない男に嫁ぐとなっても、不思議ではない。
「そう、か」
小さな頃から、父に連れられて店にきていた彼女。オルハンに対して姉のようにふるまっていた彼女。
そうだな、このままじゃこのおてんばも、適齢期をすぎちまう。年貢の納め時なんだろうな。
「それじゃあ、待ってるから」
沈黙に耐えきれなかったのか、エスラムが踵をかえす。
オルハンはとっさに、彼女がさっき見ていたこびんを差し出した。
「これもってけよ」
「え?私、お財布持ってきてないわ」
「お代はいい」
「え?」
「お得意様への、餞別だよ」
とっとけ、となおも瓶を差し出すオルハンを見て、エスラムは困った笑顔を浮かべ、手をだした。細い指が、瓶に触れる。
一瞬手が触れ合った。だが、とうとう握ることはかなわなかった。
「お幸せに、エスラム」
青年の気持ちを知ってか知らずか、彼女はありがとう、と笑った。
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