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Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by mio - 2011.11.08,Tue
本家小咄スレに貼るには長かったw

オルハンとカムランの小咄。

場所:夕雲の階段
登場人物:オルハン、カムラン
関連作品:小咄スレスレッドNo.358(清さん)
 
---------------
 
茉莉花の香を手にした客が立ち去るなり、オルハンは無言で、笑顔満遍なカムランの後頭部に、がつんとその拳を喰らわせた。予期せぬ一撃に、被害者のカムランは大袈裟なまでに前のめり、真っ赤な髪を押し潰す勢いで頭を抑えた。
「って、いった、いったー」
オルハンは騒ぐ相手を睨みつけ、鼻を鳴らすばかりだ。
「おめぇはなぁ、何やってんだよ」
「しょーばいですよしょーばい」
カムランは、決まってるじゃんと首を傾げる。
「人の店で勝手やってんじゃねえよ!」
「えー、いいじゃん、俺の鼻が確かなの、オルハンも知ってるだろー?変な香りは絶対薦めないし、今だってちゃんと売ったじゃんか」
それはそうだ。それはそうだが、オルハンとしてはそもそも、なんでお前がここにいる、というところから問いたいくらいなのだ、勝手に店番までされては、たまったものではない。
 
カムランは突如、大量の香水と共にこの隊商に、オルハンの前に現れた。
「どーもー、在庫補充でーす」
それはどうやら、オルハンの父の差し金だった。連絡くらいくれればいいのに。だがあの親父のやることだ、しかたがねえな。オルハンはため息混じりに在庫を受け取った。
しかしまさか、カムランがそのまま隊商に居座るとは予想外だった。
 
オルハンの家は、ラフサンジャーニー、カムランの家が作る香水を昔から卸して扱っている。故に彼等の間にはそれなりの親交はあった。オルハンは少し年下のこのカムランをそれなりに良く知っていたが、年少の弟たちに優るとも劣らぬやんちゃぶりがすこぶる苦手だった。
 
「すぐに帰ってもさぁ、つまんないのよ。家にいると兄ぃも親父もうるせぇし」
どうせまたどっかのお嬢さんに手を出して問題になったんだろ、とオルハンが呟いたら、今度は人妻には手を出してないさと真面目な顔で返され、オルハンは頭をかかえたくなったものだ。
 
その後、カムランはこうして気まぐれに、オルハンの仕事を手伝っている。冷やかし半分に、接客というには些か難のある態度で、ではあるが、本人としては手伝っているつもりのようだ。
たしかに彼は、調香にかけて並外れた才能があるようだし、鼻もいいから客にあったものを選びはするのだが、なにせやかましい。オルハンにとってはたまったものじゃない。
どうして自分の知人には、こう手のかかる奴が多いのだろうか?頭痛薬を取りに戻りたかったが、カムランを店に一人にする事態だけは避けたいオルハンは、一人深いため息をつくばかりだった。
 
「ねーオルハン、香油どこ?」
「はぁ?何に使うんだよ」
「この間天幕で会った子がまあ可愛くてさぁ……閃きが来ちゃったわけよ、新作の」
「はぁ?」
「あの子に合うのはー、薔薇じゃないな、茉莉花も違う、百合もいいけど…うーん、これじゃないなぁ」
言いながらも、オルハンが止める間もなく、カムランは仕分けた山を漁り出している。犬のようなカムランの鼻は、まさか箱の中の香りを嗅ぎわけてでもいるのだろうか、妙に効率よく荷を覗き込んでいる。
「金、払えよ」
「新作出来てからじゃだめ?」
「駄目に決まってんだろ!先だ先」
オルハンおっかねー、と笑うカムランに、どこまで理解が出来ているのだろうか。試作分までただで使わせられる訳がない。香油は高価なのだ。
「そもそもお前、自分でもいくらかは持ってきてるんじゃねえのか?ここじゃ計り以外はなんもねえぞ」
「ああー、そういえばそーだ、でも今やりたいんだけど」
「じゃあとっとと帰れ」
そういいながらも、オルハンははっとしてカムランの服の端を掴んだ。いつのまにか、カムランは手の中に五つほどの小瓶を掴んでいたからだ。オルハンは、空いた方の手をすっとカムランの鼻先につきつけた。
「先払いだっつんだよ」
「オルハンはめんどくせーなぁー」
笑いながら、カムランが数枚の貨幣をオルハンの手の平におく。同時にオルハンがカムランを放したので、ひらひらとした赤い布が宙を揺らいだ。
「それじゃーオルハン、出来たら買ってね」
「出来がよかったらな、しばらく篭ってろ」
軽やかな足取りで部屋を出ていくカムランを見送り、またもオルハンはため息を漏らすのだった。
 
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アサド@清さんのお話でお借りいただいたので。
天幕での一件も使わせていただきました。
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