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caravan活動記録と雑記。 登録キャラ詳細はプロフィール欄リンクよりご覧ください。
Posted by - 2024.05.14,Tue
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Posted by mio - 2011.07.27,Wed

文まとめ記事でもつくろうかなあ。  


NPCの娘@なさとさんお借りしました。


「パーパ」
「どうしたナスターシャ」
「これなあに?」
少女の小さな手が、父の右手を掴む。その薬指には、細い金色の輪がはめられていた。痩せた手にその指輪は少しばかり緩く、ナースチャが指でずらしてみると、関節に引っ掛かって止まった。
「指輪だ」
「パーパ、いつもこれしてる」
男は、施術の最中以外は、いつもこの指輪を身につけていた。それは当然だ。
「婚約指輪だからな」
「こんやく?」
「マーマと私が結婚する約束をしたという証だよ」

もう昔の話だ。
行われなかった婚礼。全ての手はずは整っていた。
だが花嫁は、縫い終えた衣装を試す間もなく世を去った。彼女の分の指輪も、その時に失われた。
そして彼女が永久に去っても、男の指輪はそこに残った。
彼女に纏わるなにもかもが見れないでいた癖に、肖像画も衣服も、総て棄ててきたのに、未練がましくこれだけは国から持って出た。金作の為に持ち出した装飾品は、母の形見を含め殆ど売り払っていたが、これを手放す気にはなれなかった。
彼女の髪一本手元に遺せなかった男にとって、それはただ一つの形見だった。
しばらく、荷の奥深くにしまい込んでいたものの、最近になってようやく、指輪は元の定位置に舞い戻ってきた。
それはきっと、この娘のお陰だ。男はそう思っていた。

対する娘は、まだくるくると指輪を回して遊んでいる。
「いいな、ナースチャもほしい」
「そうだな、お前が嫁に行くときは、作って持たせようか」
桃色に近い不思議な色の髪を撫でてやると、娘は嬉しそうに笑った。血の繋がりのない娘の容姿は男とも、死んだ女とも、髪の色も肌の色も似ても似つかなかったが、そんなことは大した問題ではなかった。

「ねえ、マーマはきれいだった?」
「ああ、とても綺麗な人だった」
長い金の髪、大きな翠の瞳。踊りが得意で、相手をするのがいつも嫌だったと男が伝えると、娘は見知ることのない母を思い浮かべ、どこか遠くに目をやった。
「ナースチャもそうなれるかなあ」
「勿論だとも」
「……ナースチャも、パーパみたいな髪の色ががよかったな」
そう漏らした娘の言葉にうまく返答はできなかったから、男は黙って、彼女の髪をもう一度撫でた。

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